前十字靭帯の再建手術には「BTB法」と「STG法」という、2種類の方法があります。
みなさんはどちらの術式を選択しますか?
迷いますよね…
- メリット、デメリットは?
- そもそも、BTB、STGって何?
- 結論、どっちにすれば良いの?
私自身、2015年に右膝をBTBで、2017年に左膝をSTGで手術しました。
両膝ともにラクロスのプレー中に受傷し、復帰を果たして2021年現在はサッカーをやっています。
この記事では、BTBとSTGを両方経験した個人(アスリート)目線で双方の術式におけるメリット・デメリット・体験談を述べていきます。「私は医者ではない」という点だけご了承ください。
この記事がみなさんの選択の参考になれば幸いです。
BTB・STGどっちがオススメ?結論
BTB・STGどちらが良いのか。まずは結論です。
個人的には、STGがオススメです。
STGの方が術後の痛みも少なく、復帰も早かったです。
ただ、諸条件が重なった結果での判断なので、「あなたは絶対に、STGが良い!」とは断言できないです。
BTB・STGって何?
そもそも、BTB・STGとは何かを簡単に解説します。
BTBとは
BTBとは、「Bone Tendon Bone」の略で、
膝蓋骨と脛骨に付着している約 3cm 程度の膝蓋腱の真ん中を、1cm 程度の上下骨をつけたまま移植する手術のことです。
要は、骨付きの腱を前十字靭帯の代わりに移植するということです。
BTB(骨付き膝蓋腱)を用いたACL再建術
— よせやん@目指せスポーツドクター (@sports_doctor93) August 12, 2020
非常にシンプルですがイメージはこんな感じですね。
骨孔の開け方や固定の仕方などは色んなバリエーションがあります。 pic.twitter.com/29eZgXGDOy
従来(1980年代)はいわゆる「Gold Standard」として主流だった術式です。
メリット
- 骨を腱と共に採取し固定するため、前十字靭帯の固定力が強い
デメリット
- 腱や骨を採取する膝前方の痛みが残る可能性がある
- 術後の痛みがSTGに比べて大きい
- 採取する膝蓋腱は腿前の筋肉(大腿四頭筋)と繋がっているため、腿前の筋力が低下しやすい
以下は術後6年(2021年現在)の傷跡です。
BTBの個人的感想
とにかく、膝の前面が痛い。(前面の腱や骨を削ったため)
術後1年ほどは、クッション無くしては膝を地面につけられないほどでした。
また、膝蓋腱を削ったためか、術後6年現在も膝蓋腱付近がうずきます。毎日マッサージをしないと気が済まないです。(本当に)
また、復帰後のプレー中、謎の痛みに襲われることもあり、個人的にはBTBをオススメできません。
(この痛みで手術した病院へ何度も行きましたが、「原因不明なので安静にすることと、正しいフォームで筋トレすることだね」と言われるだけでした。)
STGとは
STGとは、ハムストリングスの一部である半腱様筋腱(Semitendinosus=ST)と薄筋腱(Gracilis=G)を移植する手術です。
ハムストリングス(もも裏)の一部を切り取って、前十字靭帯の代わりに移植するということです。
STGは、厳密には1重束再建術と2重束再建術の2種類があり、私は後者です。
2重束再建術は、下図のように前十字靭帯の解剖学的な特徴に近いという利点がありますので、その分安定性に優れています。
BTBに代わって、1990年代以降はSTGが主流となっています。
メリット
- 手術後の採取部分の痛みが少ない
- 手術の傷がBTBと比べて小さい
- BTBと比べ、手術後の筋力の低下が少ない
- 二重束再建術によって正常靱帯に近い機能が得られる
デメリット
- 可動域訓練の開始はBTBより遅い。
- 膝屈曲筋力(ハムストリングス)が一時的に低下する(ハムの筋肉を移植するため)
STGの個人的感想
BTBと比べ、術後の痛みは軽かったし、膝を地面につけることも問題がなかったです。
ただ、やはりハムストリングスが弱くなり、もも裏の肉離れを繰り返しました。
しかし、BTBとは違い、「謎の痛み」も無かったため、これから手術する人にはSTGをオススメします、
BTBとSTGの違い
両者の違いを表にすると以下のようになります。
この表は研究(参考文献はこちら)に基づくものですが、個人的感想も同様です。
BTB | STG | |
---|---|---|
術後初期の固定力 | 強い | 弱い |
術後の痛み | 大きい | 小さい |
筋力低下 | 大きい | 小さい |
低下する筋肉 | 大腿四頭筋 | ハムストリングス |
復帰までの期間 | 10ヶ月 | 10ヶ月 |
復帰までの期間は両者ともに10ヶ月程で違いはありません。
なので、私的には痛みも少ないSTGの方が良いと思います。
「再建靭帯の固定力が弱い」というSTGの弱点をカバーするため、術後しばらくは、医師やトレーナーの指示に従い、あせらず無理をしないようにしましょう。
基本、手術する病院でBTBにするか、STGにするかを選択することはできません。
私の経験上、2種類の術式を使い分けてる病院はないからです。「この病院ではこの術式のみ」と決まっています。
別の術式が良いなら、別の病院へ行くしかありません。
右膝はBTBなのに、なぜ左膝はSTGと術式を変えたのか(私の場合)
私は右膝と左膝で違う術式を採用しました。
なぜか。それは、
- 同じリハビリでは飽きてしまうから
- 単なる好奇心
という理由です。
どうせやるなら、色々なことを試してみたいですもんね!
参考文献
- 前十字靭帯再建術における移植腱の違いが筋力回復およびスポーツ復帰時期に及ぼす影響(結論:BTBの方が早く復帰できる)
- スポーツ外傷及び障害に対する競技復帰後のパフォーマンス差異の検証(結論:STG法の方が優秀)
- 前十字靭帯損傷|スポーツ医学科の主な疾患と治療方法(BTBとSTGどちらが優秀かは述べてないが、説明がわかりやすい)
「BTBが良い」という論文もあれば、「STGが良い」という論文もあります。
なので、「どちらが良い」というのはなく、以下の違いを認識した上で、個人の判断すべきということですね。
個人的にはSTGの2重束再建術がオススメです。
BTB | STG | |
---|---|---|
術後初期の固定力 | 強い | 弱い |
術後の痛み | 大きい | 小さい |
筋力低下 | 大きい | 小さい |
低下する筋肉 | 大腿四頭筋 | ハムストリングス |
復帰までの期間 | 10ヶ月 | 10ヶ月 |